
SNSや広告などで「安いマウスピース矯正」「月○○円から始められる矯正」といった言葉を目にすることがあります。
一方で、「安すぎて不安」「インビザラインとどう違うの?」と感じるかたも多いのではないでしょうか。
マウスピース矯正にはさまざまな種類がありますが、どの治療法も一長一短があります。
ここでは、お手頃なマウスピース矯正とインビザラインの違いを整理しながら、安心して治療を受けるためのポイントを紹介します。
目次
■マウスピース矯正とは
マウスピース矯正は、透明なマウスピース(アライナー)を一定期間ごとに交換しながら、少しずつ歯を動かしていく矯正治療です。
その中でも代表的なのがインビザラインで、世界中で1,600万人以上が治療を受けている実績のあるシステムです。近年では、より安価に始められるマウスピース矯正サービスも増えていますが、治療内容や管理体制には違いがあるケースも。
■リーズナブルなマウスピース矯正とインビザラインの主な違い
◎治療の管理体制
インビザラインは、歯科医師が口腔内を直接確認し、治療計画・アタッチメントなどの補助装置の装着・歯の移動をすべて管理します。
一方、費用負担の少ないマウスピース矯正では、オンライン診療のみや歯科医師が常時関与しない形で進められるケースもあります。そのため、噛み合わせや歯の根の動きなど、細かい調整が不十分になるリスクがあります。
◎対応できる症例の範囲
インビザラインは、部分矯正から全体矯正まで幅広い症例に対応できます。一方、リーズナブルなマウスピース矯正では軽度の歯並び改善で用いられることがあり、出っ歯・受け口・深い噛み合わせなどの複雑なケースには適していない場合があります。
◎治療中のフォロー
インビザラインでは、治療途中で歯の動きが想定とずれた場合に、随時再スキャンや再製作を行うことができます。
費用負担の少ないマウスピース矯正では、フォローアップの回数が少ないなど、十分な再調整ができないこともあります。
■日本矯正歯科学会の見解
日本矯正歯科学会は、2022年に「マウスピース型矯正装置による治療に関する見解(第2版)」を発表し、いわゆる「明らかに安いと考えられるマウスピース矯正」について注意喚起を行っています。
そこでは、
- 適切な診察・検査・分析・診断・治療経過の確認を行わずにマウスピースを作成・提供する行為は、歯科医学的に危険である
- 不適切な診断や歯の移動によって、噛み合わせの不具合や歯の移動に関するトラブルなど、予期せぬ問題が生じる可能性がある
と警鐘を鳴らしています。
つまり、価格だけで選ぶのではなく、歯科医師が責任を持って診断・治療を行う体制があるかどうかが重要ということです。
※公益社団法人 日本矯正歯科学会 ポジションステートメント
■「安い=危険」ではないが、見極めが必要
もちろん、すべてのマウスピース矯正ブランドが危険というわけではありません。中には、通院頻度を減らす仕組みや部分矯正に特化することでコストを抑えている良心的なサービスもあります。
しかし、歯列矯正は単に歯を並べるだけではなく、噛み合わせ・顎関節・歯ぐきの健康まで関わる医療行為です。「価格」だけで選ぶのではなく、自分の歯並びに本当に合った治療法かどうかを、歯科医師に相談することで、自分にとって何が大切かが見えてくるでしょう。
【安心して矯正治療を受けるために】
マウスピース矯正は、透明なマウスピースを使うことで、見た目が自然で快適に進められる魅力的な治療法です。
価格を優先してフォロー体制の少ない治療を受けると、歯や顎に悪影響を及ぼす可能性もあります。信頼性の高い矯正ブランドであれば、適切な診断とフォローのもとで行われ、安心して続けられる環境が整っています。
「誰が診るか」「どこで行うか」などを意識して、自分に合った矯正方法を選びましょう。
